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美容皮膚科

肝斑とは?発生メカニズムから症状の見分け方・治し方まで解説

肝斑とは?発生メカニズムから症状の見分け方・治し方まで解説

肝斑は、両頬や額などに現れる薄茶色のシミ(色素班)です。皮膚のバリア機能の低下や持続的な刺激、ホルモンバランスの乱れなどが原因で発症したり悪化したりします。一般的なシミとは対処法が異なるため、どのように治療していけばいいのか、どう予防できるかわからない方も多いことでしょう。
本記事では、肝斑の特徴や現れやすい部位、原因やシミとの違い、治療法や予防法について詳しくご紹介します。肝斑のような症状に悩んでいる方は参考にしてみてください。

このコラムの監修者
辻井 鴻
辻井 鴻
一般社団法人 美星会
アステリアクリニック院長
【医師の経歴】
2020年 北海道大学医学部卒業
2022年 北海道内の病院にて初期臨床研修を終了
2023年10月 アステリアクリニック札幌院 院長就任
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肝斑とは?

肝斑の特徴

肝斑とは、頬骨の近くや口周り、額などに現れる薄茶色のシミ(色素班)を指します。両頬に左右対称で現れることが多く、全体的にぼやけたような形です。30~40代に発症しやすく、50代後半まで現れやすいとされています。60代以降になるとシミが薄くなったり、消えたりすることもあります。
また、炎症を伴っていることもあり、少し赤みを帯びていることもあります。

肝斑が現れやすい部位と症状

肝斑が現れやすい部位は、主に両頬と額、口の周囲などで、顔の左右対称にぼんやりと現れます。まぶたや生え際などに現れることはほとんどありません。
一般的なシミと異なり輪郭もぼんやりとしているので、シミというよりは「肌がくすんでいるだけ」のように感じられることもあります。色は薄茶色・黒っぽい茶色で、広い範囲に現れます。
おおよその位置は左右対称でも、大きさや形が異なることもあります。線形に広がったり、通常のシミ程度の大きさだったり、雲のようにもやもやと大きく広がっていたりもします。このためメイクでも隠しにくく、お悩みの方が多いです。かゆみや痛みはありません。

肝斑の発症年齢と性別による違い

肝斑は、30~40代の女性に現れやすいとされています。肝斑が現れたり濃くなったりする主な理由は肌への刺激ですが、こうした年齢による現れやすさは女性ホルモンの乱れも関係していると考えられています。
たとえば、精神的なストレス、妊娠、経口避妊薬の服用、更年期などでホルモンバランスは変動します。分泌されるホルモンの量によって肝斑の濃度が変動するのも、普通のシミとは異なる点です。60代以降で肝斑が薄くなるのは、閉経によって女性ホルモンの量が減少するからだともいわれています。
なお、まれではありますが、男性も顔への刺激やホルモンバランスの乱れなどによって、発症する場合があります。肝斑のデータは地域や人種によってかなり差があり、日差しの強い地域では肝斑の患者のうち約26%が男性だったという調査もあれば、米国における肝斑の患者のデータ比率では男性が7%程度にとどまるという結果もあります。いずれにしても、男性よりも女性のほうが肝斑の患者が多い傾向にあります。

肝斑ができる人・できない人の特徴

肝斑は肌への刺激を含むさまざまな要因が複合的にかかわって、発症したり、悪化したりします。このため、一概に「○○をしている人は肝斑が現れる」「現れない」などとはいえません。しかし一例として、次のような特徴を挙げることができます。

肝斑ができやすい傾向にある人の例肝斑ができにくい傾向にある人の例
30~40代の女性精神的なストレスを感じている妊娠している経口避妊薬を服用している紫外線を浴びやすい環境で過ごしている皮膚への物理的な刺激が多いメイクやクレンジングなどで擦っている横向きで寝る癖がある60代~精神的なストレスが少ない紫外線を浴びる機会が少ない皮膚への物理的な刺激を避けるよう工夫している

肝斑の原因とメカニズム

肝斑の原因はさまざまな要素が絡みますが、慢性的な刺激による影響が大きいです。
普段生活する中で、摩擦や紫外線によるダメージを受け続けた肌は、バリア機能が低下してしまいます。バリア機能が低下すると、肌の内部に雑菌や微小な異物が入り込みやすく、これに反応した炎症を起こしやすくなります。炎症が起きると、肌を守ろうとした身体がメラニン色素の生成を増加させるため、肝斑が現れたり濃くなったりすると考えらえています。
肝斑はメラニン色素によって生じるため、メラニン色素を増加させるさまざまな行為が肝斑の悪化につながるとされるのです。以下では、肝斑の原因であるメラニン色素を増やしてしまう要素と、メカニズムについて確認していきます。

ホルモンバランスの乱れが引き起こすメラニン過剰生成

ホルモンバランスの乱れは肝斑を悪化させる要因の一つとして考えられています。
女性ホルモンのエストロゲンは、メラニン生成の調整にかかわる働きを担っています。妊娠や出産、経口避妊薬の服用、更年期などでホルモンバランスが乱れたり変化したりすると、色素細胞のメラノサイトを過剰に刺激してしまいます。
すると、メラニン色素が増えて肝斑の発生や悪化につながるのです。

紫外線による肝斑悪化のプロセス

紫外線は日常的に肌にダメージを与え、バリア機能を低下させたり、乾燥による悪循環を引き起こしたりします。
紫外線によってダメージを受けるとメラノサイトの産生が増加し、メラニン色素の量も増えてしまいます。メラニン色素が増加すると、肝斑の悪化につながります。
UVカット機能を持つ帽子や衣服を着用したり、UVカット機能付きの傘を活用したりして、紫外線によるダメージから肌を守りましょう。また、こまめに日焼け止めクリームを塗り直すことも大切です。

ストレスや睡眠不足が肝斑に与える影響

ストレスや睡眠不足は、肝斑の発症や悪化につながる可能性もあります。ストレスや睡眠不足は、ホルモンバランスの乱れを引き起こす原因のひとつだからです。
前段でも触れたようにホルモンバランスが乱れてしまうと、メラノサイトを過剰に刺激してしまいますし、メラニン色素の排出を担うターンオーバーも乱れてしまいます。
規則正しい生活習慣とストレスを溜めないよう心がければ、健全なホルモンバランスを維持できるだけでなく、肌のバリア機能も健やかに保てます。

  • 適度な運動を心がける
  • なるべく同じ時間に起床、就寝する
  • 趣味や運動でストレスを解消する
  • 栄養バランスを意識した食生活を心がける

などのポイントを意識して生活してみてください。

肝斑とシミの違い

肝斑やシミ、そばかすの主な違いは、以下の通りです。

種類とくに現れやすい部位見た目
肝斑主に両頬、口の周り、額輪郭がぼんやりと曖昧、左右対称、薄茶色
シミ紫外線を浴びやすい部分丸や楕円で大小さまざま、薄茶色から濃い茶色までさまざま
そばかす顔の中心から全体小さい斑点、薄茶色

以下では肝斑の特徴、シミやそばかすとの違い、見分け方をわかりやすく解説します。

肝斑・シミ・そばかすの見た目の違いは?

肝斑は、主に両頬や、口の周り、額などにとくによく現れやすいです。一方シミは、紫外線を浴びやすい部分であれは、顔以外の部位にも現れます。そばかすは、鼻を中心として顔全体に現れやすく、発症年齢も学童期に多いのが特徴です。
大まかな見た目で見分けることも可能で、ぼんやりと曖昧な形で比較的大きく、左右対称に現れていれば肝斑の可能性があるといえるでしょう。丸、または楕円形で粒のように小さなものから数cm程度のものまで大小さまざまなものがシミです。
ただし、肝斑やシミなどは同時に現れていることもあり、自分で見分けるのは難しいケースもあります。治療を検討している場合は、医療機関のカウンセリングを受けて肌の様子を見てもらうようにするとよいでしょう。

左右対称性から考える肝斑の特徴

肝斑の大きな特徴といえるのが、左右対称に現れやすいという点です。たとえば、頬に現れた場合は、両頬に同じような大きさ、形、色で発症しやすいと考えられています。
とはいえ、必ず左右対称に現れるわけではありませんし、シミや後天性真皮メラノサイトーシス(あざの一種)なども左右対称に現れることがあります。左右対称に症状が現れているからといって、ただちに肝斑と決まるとはいえないのが難しいところです。

専門医が診断する肝斑とシミの見分け方

皮膚科では、肝斑と疑わしい部分の見た目を確認し、問診と検査によって診断を下します。とくにメラニン色素が沈着している層が異なり、悪化の要因が異なるため、後天性真皮メラノーシスとの鑑別が必要で、結果によって治療方法も変わります。
紫外線ランプを活用してメラニン色素の沈着した層を見分けるウッド灯検査、皮膚や血管を拡大して観察するダーモスコピー(専用のルーペ)による検査などが行われます。皮膚の一部をくり抜いて確認する皮膚生検という方法もありますが、身体への負担を考慮して必要性が高いとされたときに用いられることが多いです。

肝斑の治療法

肝斑治療の基本は、刺激を抑え、悪化の要因を減らしてメラニン色素の生成を抑えることです。ターンオーバーを促進させる外用薬や、レーザーによる治療は肌への刺激が生じるため、様子を見ながら必要に応じて追加することになるでしょう。
主な治療法の特徴を以下にまとめました。

治療法特徴治療期間
内服薬トラネキサム酸:メラニン色素の生成を抑制させる、炎症を抑える4~5週間程度
外用薬ハイドロキノン:メラニン色素の生成を抑制させるトレチノイン:皮膚のターンオーバーを促進させる3ヶ月~
レーザー皮膚にレーザーを照射し、メラニン色素を減少させる3~6ヶ月程度
マイクロニードルRFマイクロニードルで皮膚に微細な穴を開け、高周波で肌の奥深くに熱を与えて肌質を改善させる6ヶ月~1年程度

ここからは、肝斑の主な治療法としてそれぞれをわかりやすく解説します。

医療機関で受けられる効果的な治療オプション

皮膚科や美容皮膚科では、主に内服薬(飲み薬)と外用薬(塗り薬など)、レーザー、マイクロニードルRFという4種類の治療法が提供されています。
後述するような生活習慣の改善やホームケアなどにより、まずはバリア機能を高めるよう医師の指導を受けます。内服薬や外用薬を活用しながら、悪化の要因となる炎症や刺激を可能な限り抑え、生成されるメラニン色素の量を減少させることで肝斑が薄くなるようにする治療となります。
トレチノインやレーザー、マイクロニードルRFなどによる治療は、上記のような治療を実施したうえで、必要に応じて併用・追加されます。

内服薬・外用薬による薬物療法の種類と効果

肝斑の治療で処方される主な内服薬や外用薬は、以下の通りです。

成分作用
トラネキサム酸メラニン色素の生成を抑制させる、炎症を抑える
シナールビタミンCの働きを助ける
ハイドロキノンメラニン色素の生成を抑制させる、メラノサイトを減少させる
トレチノイン皮膚のターンオーバーを促進する

トラネキサム酸は、メラノサイトを刺激するプラスミンの活性化を抑え、メラニン色素生成の抑制を助けてくれます。また、抗炎症作用もあるため、メラニン色素生成の原因となる炎症を抑えられます。
シナールは、ビタミンCによるメラニン色素の生成抑制や色素沈着の軽減などを期待できます。外用薬のハイドロキノンは、メラニン色素の合成を抑え、メラノサイトも減らす薬です。トレチノインは皮膚のターンオーバーを促進して、沈着しているメラニン色素の排出を促します。

レーザー治療・マイクロニードルで得られる効果と回復期間

レーザートーニングは、弱い出力のレーザーを肌の広い範囲に照射する治療です。レーザーが照射された部分は、メラニン色素が分解され、代謝によって排出されていきます。治療回数を重ねていくことで、メラニン色素の量が減少していきます。
ポテンツァやエリシスセンスなどのマイクロニードルRFは、肌に微細な針を刺し、針の先から高周波を流します。電流による刺激でメラノサイトの活性を抑制したり、肌を傷つけることで再生を促し、ターンオーバーを促進させ、メラニン色素を排出させることが可能です。
レーザーやマイクロニードルRFの施術直後は、赤みや痛みが出てくることもあります。治療を受けた当日は、肌を強く擦らないようにすることも大切です。

肝斑の予防法とホームケア

肝斑の治療では、悪化を抑えるため、日々のケアや過ごし方が最も重要となります。
たとえば、以下のようなポイントを押さえておきましょう。

  • 紫外線対策を行う
  • 肌に強い刺激を与えない
  • 保湿を徹底する
  • バランスの取れた食生活を意識する

それでは、肝斑の予防法とホームケアを解説します。

紫外線による刺激から肌を守る

肝斑を予防するためには、メラニン色素が生成される原因である紫外線のダメージを防ぐ必要があります。UVカット機能付きの帽子や衣服、傘、日焼け止めクリームを使用してみましょう。日焼け止めクリームを塗るときは、適量を手に取り、両頬と額、鼻、あごに置いて、なるべく摩擦を抑えて丁寧になじませていきます。
肌に届く紫外線の量は季節によって異なるため、季節に合わせて使用するアイテムを変更するのもポイントです。春は徐々に紫外線量が増えていくため、SPF30〜、PA+++~の日焼け止めクリーム、UVカット機能付きの帽子などを使用しましょう。
夏から9月ごろにかけては、とくに紫外線の量が多くなります。屋外で過ごす際は、SPF50以上もしくはPA+++以上の日焼け止めクリーム、UVカット機能付きのアイテムを併用するとよいでしょう。

バリア機能を正常に保つスキンケア

肌のバリア機能を保つためには、徹底した保湿ケアが大切です。バリア機能が低下していると、肌が刺激を受けやすくなったり、回復する力が弱まったりします。化粧水だけで済ませるのではなく、乳液やクリームなどの油分を含むアイテムで蓋をして、肌の水分を逃がさないようにケアしてください。
またバリア機能は、紫外線や摩擦をはじめとした刺激によっても低下します。洗顔やクレンジング、メイクなどで肌を擦らないよう日ごろから注意してください。頬を枕につけて寝たり、長時間マスクを付けていたりすることも刺激になります。肌を刺激から守ることが大切です。

食生活と生活習慣の改善

肌のバリア機能には、食生活や生活習慣もかかわっています。偏った食事を続けていたり睡眠不足が続いていたりすると、免疫力や回復力が低下してバリア機能も低下します。
水分をしっかりとり、栄養バランスの整えることが大切です。特定の栄養素を強化する余裕があれば、次のような食材も意識してみましょう。

栄養素働き
栄養素働き
ビタミンA肌のうるおいを保つ・ほうれん草
・にんじん
・海藻類
・レバー
・うなぎ
・鶏卵
ビタミンC肌のうるおいを保つ、メラニン色素の生成を防ぐ・いちご
・キウイ
・かぼちゃ
・ブロッコリー
・レモン
・パプリカ
ビタミンE・ポリフェノール炎症を抑える抗酸化作用がある・大豆食品全般
・かぼちゃ
・パプリカ
・ナッツ

規則正しい生活は、バリア機能を正常に保ってくれます。次のようなポイントを押さえて生活習慣も改善しましょう。

  • 適度な運動を心がける
  • 睡眠を十分にとる
  • 趣味を見つけてストレスを解消する

まとめ

肝斑は、額、両頬、口の周辺などを中心に現れる薄茶色のシミ(色素班)で、左右対称で現れることも多いです。全体的にぼやけたような形に見えるのが特徴で、大きく広がっていることもあれば、線形に現れることもあります。内服薬と外用薬でメラニン色素の生成を抑えながら生活習慣を改善する治療が基本で、必要に応じてレーザー、マイクロニードルRFを併用することもあります。
肝斑の治療は、できる限り刺激を与えずにメラニン色素の排出を促す必要があるため、肌の状態や症状に合わせた対応が必要です。アステリアクリニックでは、丁寧なカウンセリングで一人ひとりに合わせた治療をご提案しております。肝斑にお悩みの方は、ぜひカウンセリングまでお越しください。

この記事の監修者
辻井 鴻
辻井 鴻
一般社団法人 美星会
アステリアクリニック院長
【医師の経歴】
2020年 北海道大学医学部卒業
2022年 北海道内の病院にて初期臨床研修を終了
2023年10月 アステリアクリニック札幌院 院長就任