トラネキサム酸の効果とは?美白・健康への効果と副作用を詳しく解説

トラネキサム酸は、人工的に作られたアミノ酸で、抗炎症剤や止血剤として活用されています。肝斑やシミの原因でもあるプラスミンの働きが抑えられるため、美容医療においては色素沈着の改善、予防などにも用いられます。
本記事では、トラネキサム酸の役割や美白効果、副作用や注意点について詳しくご紹介します。肝斑やシミに悩み、トラネキサム酸やスキンケアの方法などに関心を寄せている方は、ぜひ参考にしてみてください。

アステリアクリニック院長
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目次
トラネキサム酸とは?医薬品と美容成分のそれぞれの役割

トラネキサム酸とは、1962年に開発された人工的なアミノ酸のひとつです。
医薬品としては次のような用途があります。
- 元々は術後の出血を止める止血剤
- のどの痛み、口内炎など炎症を抑える治療薬
- じんましん、湿疹などの抗アレルギー薬
- シミや肝斑の治療薬
トラネキサム酸というと化粧品などでなじみ深く、美容のイメージが多い方も多いのではないでしょうか。トラネキサム酸は抗炎症・抗アレルギー作用などがあり、医薬品としても幅広く使用されています。
トラネキサム酸は抗プラスミン剤とも呼ばれ、痛みや腫れなどの炎症を悪化させるプラスミンという酵素を抑えるはたらきがあります。このプラスミンを抑える作用が、医薬品や美容成分としてのさまざまな効能に関与しているのです。
ここからは、トラネキサム酸の歴史や効能、美容業界で注目されている理由、市販製品の種類をわかりやすく紹介します。
医薬品「トランサミン」としての歴史と効能
トランサミンは術後の出血を抑えるために開発された止血剤で、トラネキサム酸を主成分としたものです。1965年、日本で開発され、以来医療現場で使用されています。
トラネキサム酸が抑えてくれるプラスミンという酵素は、血液を凝固(固める)させるフィブリンを分解してしまいます。またプラスミンはリジンと結合して、痛みを引き起こしたり、血管を拡張させて腫れを引き起こしたりするブラジキニンを産生します。
プラスミンの結合を抑制することで、止血だけでなく、のどの痛み、腫れ、口内炎、扁桃腺炎、咽頭炎などを鎮静させる治療薬としても活用されています。
またアレルギーなどの原因であるキニンの産生も抑制するため、湿疹や蕁麻疹などの治療薬として用いられることもあります。
美容業界で注目される理由と実績
トラネキサム酸は、美容業界でも広く活用され、注目されている成分のひとつです。医薬部外品においては、1995年に肌荒れを防止する有効成分として、2002年に美白の有効成分として厚生労働省に承認されました。また2007年には医薬品として肝斑の改善薬が販売されるようになり、現在も美容におけるさまざまな用途での開発が進められています。
詳しい仕組みは記事の後半で解説しますが、トラネキサム酸の美白効果と抗炎症作用は、幅広い肌悩みにアプローチできるため、美容業界においても大変活躍しています。
内服薬や外用薬による肝斑・しみ・そばかす・色素沈着などの治療、イオン導入などの美容液や薬剤にも活用されています。医薬部外品などで身近に手にすることもあるためか、美容医療を検討する方の認知も広く、さまざまなクリニックで扱われている成分です。
トラネキサム酸を含む市販製品の種類
トラネキサム酸は人工的に作られたアミノ酸のため、果物や野菜をはじめとした食品には含まれていません。
医療機関で処方される薬とは、含有量が異なり、効果や副作用の強さ、服用できる症状が異なります。たとえば肝斑で承認されている市販薬は、現在1つしかありません。本格的に肝斑やシミを治療したい場合は、医療機関による診察が必要です。
また化粧品(医薬部外品)は「改善」ではなく「予防」を目的とするため、すでにできてしまったシミなどを改善したい場合は、やはり医療機関での治療が必要となります。
たとえば次のような製品にトラネキサム酸が含まれています。
種類 | 市販製品 | 効果 |
---|---|---|
内服薬 | 飲み薬、トローチ、シロップなど | 肝斑を薄くするのどの痛み、腫れ、口内炎の鎮静風邪の治療 |
外用薬 | クリームなど | 肌荒れ・炎症の鎮静 |
薬用化粧品(医薬部外品) | 化粧水、クリームなど | しみ、そばかす予防(メラニン色素生成抑制による)肌荒れ予防(抗炎症による) |
トラネキサム酸の美白効果とシミ改善のメカニズム
トラネキサム酸は、肝斑やシミの治療薬としても用いられており、その美白効果は多くの方がご存じでしょう。続いては、トラネキサム酸の美白効果やシミ改善に関するメカニズム、肝斑に対する臨床効果について解説します。
シミやメラニン生成を抑制する科学的根拠
トラネキサム酸が抑制するプラスミンは、シミの元になるメラニン色素を作るメラノサイトの活性化因子でもあります。メラニン色素が過剰に生成されて代謝が追い付かなくなると、蓄積したメラニン色素によって徐々にシミが現れたり、悪化したりします。
紫外線や摩擦などによってケラチノサイト(表皮の大部分を占める角化細胞)に刺激が加わると、プラスミンが生成されます。プラスミンはメラノサイトを刺激するため、トラネキサム酸で抑制することで、シミの発症や悪化の予防につながるのです。
肝斑に対する臨床効果とエビデンス
トラネキサム酸は、シミだけでなく肝斑の改善にも効果があると考えられています。
肝斑は、30~40代の女性に現れやすい疾患のひとつです。シミと異なり、両頬や額、口の周辺に薄く広く現れます。薄茶色で、ぼんやりとした形をしています。
肝斑を発症する明確な理由は解明されていませんが、慢性的な刺激によって現れたり悪化したりすると考えられています。先述したとおり、トラネキサム酸はメラニン色素の生成を促すプラスミンを抑制するため、肝斑の悪化予防や改善にも効果が期待できるとされているのです。
2022年の臨床試験では、経口処方(口から飲み込む)と経表皮投与(皮膚からの吸収)で効果が検証されました。8週間経過後に一定の効果が認められています。
トラネキサム酸の美白効果はいつから現れる?

トラネキサム酸の内服薬の服用による美白効果は、一般的に4~8週間程度で現れ始めるとされています。効果が現れる期間には個人差があり、ターンオーバーの周期、シミの状態と種類、体質や生活習慣、併用している治療の有無や種類などによって変わります。
不規則な生活習慣を続けていたり、短期間の服用で止めてしまったりした場合、美白効果が現れにくいです。またせっかく抑制しているプラスミンを増やさないよう、紫外線や摩擦による刺激を受けないように注意して過ごしましょう。
続いては、トラネキサム酸と他の美白成分に関する違い、併用によって期待される効果を紹介します。
他の美白成分との違いと併用効果
シミや肝斑などの治療では、シナールやトレチノイン、ハイドロキノンといった治療薬も処方されることがあります。
シナールは、ビタミンCやパントテン酸が含まれた内服薬です。ビタミンCは、表皮に現れたメラニン色素を薄くする作用があり、シミや肝斑の改善につながります。また、パントテン酸は、ビタミンCの働きを助けてくれます。
トレチノインは、ビタミンA誘導体(ビタミンAの構造が変化したもの)が含まれた外用薬で、ターンオーバーを促進させ、メラニン色素の排出を促します。
ハイドロキノンは、ヒドロキノンを主成分とする外用薬で、メラニン色素の合成に必要なチロジナーゼという酵素の働きを抑えたり、メラノサイトの数を減少させたりしてくれます。
こうした医薬品は、赤みや皮膚のかさつきなどの炎症が生じることがありますが、トラネキサム酸を併用することで比較的炎症が現れにくくなります。このため、トラネキサム酸とシナールとトレチノイン、ハイドロキノンを併用することもあります。異なる作用でメラニン色素にアプローチすることで、より効率的にメラニン色素の蓄積を予防し、排出させることができます。
トラネキサム酸の副作用と注意すべき点
トラネキサム酸は大きな副作用は現れにくい医薬品です。しかしまったく副作用がないわけではなく以下のような症状が現れることもあります。
- 嘔吐
- 吐き気
- 食欲不振
- 下痢
- 発疹
- 胸やけ
- かゆみ
など
違和感を覚えた場合は、すぐに服用・使用を中止し、処方された医療機関で医師に相談しましょう。
以下では内服薬と外用薬に分けて、トラネキサム酸の副作用や対処法、服用や使用を控えるべき人の特徴、注意点を解説します。
内服時に起こりうる副作用と対処法
トラネキサム酸の内服では、稀ではありますが次のような副作用が現れることがあります。
- 食欲不振
- 発疹
- 胸やけ
- 腹痛
- 嘔吐
- 吐き気
- かゆみ
- 頭痛
- めまい
- 動悸
- 眠気
- 血栓
メラニン色素の生成を抑えたいからといって、医師の指導を守らずに服用すると大変危険です。用法・用量を守り、安全に服用しましょう。
めまいや胸やけ、腹痛などの一般的な消化器系の不調を感じるだけであれば、不調を感じるときは服用せず様子を見るだけで問題ないこともあります。
しかしごくまれにけいれん、呼吸困難といった重い症状を引き起こすこともあります。異変を感じた場合や、症状が長引いたり悪化したりする場合は、すみやかに医師や薬剤師に相談しましょう。
外用での肌トラブルと回避方法
トラネキサム酸の外用薬を使用した場合、まれに肌トラブルが起きることもあります。
たとえば、かゆみや発疹といった症状が、一時的に現れる場合もあります。掻いてしまうと肌に刺激となるため、タオルにくるんだ保冷剤などで冷やして安静にしましょう。
症状が現れた場合はすぐに使用を中止し、医師や薬剤師に相談することが大切です。
服用・使用を控えるべき人の特徴
トラネキサム酸のよく知られた副作用のひとつとして、血栓症リスクが挙げられます。トラネキサム酸は、止血剤として使用されているように、凝固した血液が溶けにくくなる作用があります。
- 妊娠中の人や血栓ができやすい人
- 脳梗塞や心筋梗塞の既往歴がある人
- 低用量ピルを服用している人
- 術後で安静にしなければならない人
- 圧迫止血を受けている人
など血栓のリスクがある方は使用を控える必要があったり、服用できなかったりする場合があります。
また発疹やかゆみ、顔や舌の腫れ、口内炎、喉の痛みなどのアレルギー反応が報告されているため、アレルギー体質の方も服用できないことがあります。人工透析を受けている方は、けいれんなどの副作用を引き起こすこともあります。治療を受けたいときは、あらかじめ医師に相談しましょう。
併用注意の薬剤や成分
他の薬剤や成分との併用は、一部注意が必要です。先ほど触れたように血栓のリスクがあるため、止血剤との併用は禁忌とされ、低用量ピルも医師と相談しましょう。
その他治療などで内服薬を服用している場合は、必要に応じて、トラネキサム酸の外用薬による治療や、レーザー治療などの他の方法を検討してみましょう。
風邪薬などの一般的な市販薬にもトラネキサム酸が含まれていることがあるため、過剰摂取とならないよう、服用前に成分を確認するよう気をつけましょう。また、トラネキサム酸が含まれていない市販薬を探してみましょう。
長期使用の安全性
トラネキサム酸の長期使用については、6ヶ月程度までが一つの目安とされています。6ヶ月を超える服用については治療状況や個人の体質を考慮する必要があるため、クリニックや医師によっても見解がわかれます。
長期的に連続で服用する場合は、数ヶ月服用後に休薬期間を設ける場合もあります。血栓症、肝機能障害のリスクを抑えるためです。医師の指導に従って、正しく服用しましょう。
なお、トラネキサム酸の使用期間にかかわらず副作用が出る場合もあります。異変を感じたらすぐに医師や薬剤師へ相談することも大切です。
まとめ
トラネキサム酸は人工的なアミノ酸で、プラスミンの働きを抑える作用があります。元々は止血剤として使用されていましたが、医薬品としては湿疹や蕁麻疹、口内炎、扁桃腺炎、咽頭炎などの治療薬としても活用されています。
美容業界においては、プラスミンを抑制することでメラニン色素の生成を抑制する、美白効果という点でも注目されており、シミや肝斑の治療薬でもあります。
アステリアクリニックでは、シミや肝斑などのお悩みにアプローチできる、医薬品やレーザーなどを使用した治療を行っています。シミや肝斑の治療は、多岐にわたり、複数回に及ぶ施術も多いため、お悩みの方も多いです。どのような施術が向いているか、カウンセリングでご提案することも可能ですので、気になる方はぜひアステリアクリニックまでお越しください。

アステリアクリニック院長