フラクショナルレーザー治療とは?効果とダウンタイムについて解説

フラクショナルレーザーは、ニキビ跡や毛穴の開き、シワなどの肌トラブルでお悩みの方に注目されている美容治療です。しかし本当に効果があるのか、ダウンタイムはどの程度なのか、といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。
この記事では、フラクショナルレーザー治療を検討されている方に向けて、治療の仕組みや期待できる効果、実際の施術の流れなどを解説します。肌の悩みを根本的に改善したいと考えている方はぜひ参考にしてください。

アステリアクリニック院長
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目次
フラクショナルレーザーとは

フラクショナルレーザーは、肌表面にマイクロレーザービームを照射し刺激を与えることで、ニキビ跡や毛穴の開き、シワなどの改善を目指す美容医療です。
顔の気になる部位に対して専用の装置を用い、微細なレーザーを点状に照射することで、表皮の内側に存在する真皮を中心に熱エネルギーが加わり、組織が一度損傷を受けます。
その後、肌が正常組織へと再構築される過程で、健康な肌に必要とされるコラーゲンやエラスチンといったタンパク質が生成され、肌の凹凸や肌質の根本的な改善が期待できるのです。
1回の治療で10~20%が新しい肌に入れ替わるとされており、美容医療の領域では「肌を入れ替える治療」として位置づけられています。
従来のレーザー治療との違い
これまでのレーザー治療は面状にレーザーを当てる方法が主流でした。そのため肌に与えるダメージが大きく、火傷などの肌トラブルを引き起こすリスクが高かったのです。
一方でフラクショナルレーザーによる美容医療は、点状にレーザーを照射する画期的な技術です。
レーザーを当てた部分と当てていない部分が交互に存在することとなるため、健康な肌が重大なダメージを受けにくく、結果として色素沈着のリスクを大幅に減らしながら、肌のターンオーバーを促すことが可能となりました。
種類別の特徴と違い(CO2、エルビウムYAG)
フラクショナルレーザーには、レーザーの波長によって3つのタイプがあり、波長が違うと水分への吸収率が変わります。
人間の皮膚は約70%が水分でできているため、水分によく吸収される波長のレーザーほど皮膚の浅い部分で強く作用し、吸収されにくい波長のレーザーほど皮膚の深い部分まで届くという違いが現れます。
種類 | 波長 | 水分への吸収率 | 凝固 | 効果 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
アブレイティブタイプ(CO2) | 10,600nm | 高い | する | 高い | 従来より一般的なフラクショナルレーザー血は出ないが凝固するため、他の2つと比べるとダウンタイムが長い |
アブレイティブタイプ(エルビウムYAG) | 2,940nm | 非常に高い | しにくい | 中程度 | 血が出ることがあるが、ダウンタイムは比較的短い |
ノンアブレイティブタイプ | 512〜1,550nm | 低い | -(傷がつかない) | 低い | ダウンタイムが短く済むが、複数回の施術が必要 |
CO2レーザーは、水分によく吸収される波長で、皮膚の比較的深い層まで届き、皮膚組織を蒸散(蒸発)させます。同時に凝固させることで止血することができますが、その分皮膚が治るまでに時間がかかる傾向にあります。
エルビウムYAGレーザーは水分への吸収率が非常に高いため、皮膚の浅い層に瞬時に反応して皮膚組織を蒸散させます。凝固が起きにくく出血することがありますが、ダウンタイムは比較的短めです。
ノンアブレイティブタイプは水分への吸収率が低く、皮膚組織は蒸散させません。CO2やエルビウムYAGと違って皮膚を傷つけない分、ダウンタイムが短いです。しかし蒸散させない分、1回あたりの効果は高くないため、複数回の施術が必要なことが多いです。
フラクショナルレーザーの効果
フラクショナルレーザーは、真皮のコラーゲン再生と皮膚のターンオーバーを促すことにより、以下のような肌トラブルに対する効果を発揮することが期待できます。
- ニキビ跡の凹み・クレーター改善
- 毛穴の開き改善・引き締め効果
- シワ・たるみの改善
- くすみ改善・美肌効果
- 傷跡・ケロイド治療
- 色素沈着・シミの軽減
ニキビ跡・クレーターへの効果
ニキビ跡に見られるクレーター状の凹みは、炎症によって皮膚組織が破壊され、正常な皮下組織の代わりに硬い組織ができることで生じます。
フラクショナルレーザーは、この硬くなった組織を一度破壊し、再構築させることで、皮膚の凹凸を改善します。
皮膚の蒸散を伴うフラクショナルレーザーでは1回の治療で肌の10~20%が入れ替わるため、3~5回の継続治療により目立たないレベルまで改善することが期待できます。特になだらかな凹みや四角い凹みタイプのニキビ跡には高い効果が期待できます。深い凹みに対しても、高出力設定により改善が可能です。
従来は治らないとされていた深いクレーター状の凹みに対しても、現在では有効な治療法とされています。
毛穴の開きと引き締め効果
毛穴の開きは、過剰な皮脂分泌や加齢によるコラーゲンの減少、紫外線によるダメージなどが複合して起こります。特に年齢を重ねると、毛穴を支えている皮膚がたるんで毛穴が目立つようになるのです。
そこでフラクショナルレーザーは、毛穴周りの皮膚の奥に熱エネルギーを届け、コラーゲンの生成を促します。新しく作られたコラーゲンが毛穴周りの組織を内側から引き締めることで、毛穴の縮小効果が得られるという仕組みです。継続的な治療により毛穴が目立ちにくくなり、化粧ノリも改善が見込めます。
実際に、毛穴の開きを改善する方法として、フラクショナルレーザーがスタンダードな治療法の一つとなっています。
シワ・たるみへの改善作用
加齢とともに肌の弾力を保つための成分であるコラーゲンとエラスチンが減少し、シワやたるみが形成されます。こうした肌の張りを改善するにあたって、フラクショナルレーザーが有効とされているのです。
フラクショナルレーザーによる刺激でコラーゲンやエラスチンの生成を促すことで、皮膚の内側から皮膚の張りを取り戻す結果、シワの改善やたるみの引き締めの実現が期待できます。
細かいちりめんジワから深いシワまで幅広く対応でき、部位に応じてレーザーの強さや深さを調整することも可能です。
フラクショナルレーザーの施術の流れ

フラクショナルレーザーの施術は、以下の流れで進めることが多いです。
- カウンセリング・診察(15~30分)
- 洗顔・クレンジング(10分)
- 麻酔クリーム塗布(20~40分)
- レーザー照射(15~30分)
- 冷却・軟膏塗布(10~20分)
- 術後説明・帰宅(10分)
全体の所要時間は1~2時間程度です。
麻酔クリームを塗布してから効き目が現れるまで待つ時間が最も長く、実際のレーザー照射はそれほど時間がかかりません。顔全体を照射する場合でも、15~30分程度で完了することが多いです。
施術前の準備と注意点
フラクショナルレーザーの施術を受ける1ヶ月以内に日焼けをした場合は、照射によって色素沈着が生じるリスクが高まるため、治療を受けられません。また、レーザー・光を照射するほかの治療を受けている方は、事前に医師に申し出てください。
加えて、妊娠中・授乳中の方やケロイド体質の方は治療を受けることができません。ヘルペスの既往歴がある方は、予防薬の処方が必要な場合があります。光過敏症や光アレルギー、てんかんなどの既往歴がある場合は事前申告が必要です。
また、レチノイン酸やハイドロキノンなどの美白剤、ピーリング作用のある化粧品の使用も施術前は控えてください。加えて施術1週間前からは新しい化粧品の使用を避け、肌の状態を安定させましょう。
当日の施術手順
当日の施術は以下の手順に沿って進むケースが多いです。
手順 | 説明 |
---|---|
診察とカウンセリング(15~30分) | 医師による肌の状態確認と照射設定の決定。治療内容の説明を受け同意書にサイン。 |
洗顔・クレンジング(10分) | パウダールームでメイクや皮脂などの汚れを除去。 |
麻酔クリーム塗布(20~40分) | 照射時の痛みを軽減するため、麻酔クリームを治療部位に塗布し、皮膚の感覚が鈍ってくるまで待機。 |
レーザー照射(5~20分) | 麻酔クリーム除去後、レーザーから目を守るためのアイシールドを装着して、レーザーを照射。 |
冷却・軟膏塗布(10~30分) | 照射後は冷却パックで施術部位を冷やし、必要に応じて軟膏や美容液を塗布して肌を保護し回復を促進。 |
術後説明・帰宅(10分) | 術後の注意事項について説明を受け、必要に応じて次回分を予約。当日はメイクをせずに帰宅。 |
上記全体で約1~2時間の時間を要します。
施術時間と痛みの程度は?
フラクショナルレーザーの実際の照射時間は、治療部位によって異なります。鼻単体では5~10分、両頬で10~15分、顔全体の場合は15~30分程度で終わることが多いです。
痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの方が「チクチクとした痛み」や「輪ゴムで弾かれるような感覚」と表現します。麻酔クリームの塗布により痛みはある程度和らぎます。
麻酔が切れた後もじりじりとした熱感が残り、それによって痛みを生じることがありますが、冷却パックを皮膚に当てることで痛みを抑えられるでしょう。
それでも痛みを強く感じる場合は、医師と相談しながらレーザーの出力調整を行うことも可能です。
フラクショナルレーザーのダウンタイム
フラクショナルレーザーのダウンタイムは、以下のように経過します。
- 施術直後:赤み・熱感・ヒリヒリ感
- 1~2日後:赤みの軽減、軽度の腫れ
- 2~3日後:点状のかさぶた形成
- 3~7日後:かさぶたの剥がれ落ち
- 1~2週間後:肌のざらつき改善
施術後の回復期間中は保湿の徹底や日焼け止めクリームなどによる紫外線対策を徹底するとともに、かさぶたを剥がさないように注意が必要です。
ダウンタイムの長さや症状には個人差があり、使用するレーザーの種類や照射の強さによっても大きく異なります。アブレイティブタイプの炭酸ガスレーザーでは1~2週間、エルビウムYAGでは3日~1週間、ノンアブレイティブタイプの場合は1~3日程度が目安となります。
翌日からのメイクは可能ですが、施術部位への刺激は避けてください。
ダウンタイムの期間と症状の変化
治療直後から翌日にかけて、日焼け後のような火照り感が生じ、赤みは3日~1週間程度継続します。軽度の腫れも1~2日程度生じる場合があり、特に目の周りなど皮膚の薄い部分では腫れが目立つことがあります。
2~3日目には照射部位に点状のかさぶたが形成されます。この時期は肌が一時的に濃くなったように見えることがありますが、これは正常な回復過程です。肌表面がザラザラして一時的に化粧ノリが悪くなることもあります。
4~7日目でかさぶたが自然に剥がれ落ち始めます。無理に剥がすと色素沈着の原因となるため、できるだけ触らないよう自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。この時期から徐々に新しい肌が現れてきます。
1~2週間目には肌表面のざらつきが改善され、新しいきれいな肌が完全に現れて治療効果を実感できるようになり、肌の張りやツヤの改善を実感する方が多くなります。ただし照射設定や個人の肌質により、ダウンタイムの期間や症状の変化は異なることを理解しておいてください。
回復期間中のスキンケア方法
フラクショナルレーザーを照射した後の肌は乾燥状態となるため、皮膚のバリア機能を保つためにも保湿は特に重要なポイントです。
セラミドやヒアルロン酸配合の低刺激性保湿剤を朝晩たっぷりと使用してください。1~2日間は化粧水や美容液が肌にしみる場合がありますが、徐々に改善されるので多くの場合、過度な心配はありません。
洗顔は刺激の少ない洗顔料で優しく行い、タオルでこすらず押さえるように水分を吸い取ります。治療部位を強くこすったり、かさぶたを無理に剥がしたりしないよう注意が必要です。
また、季節によらずSPF30以上の日焼け止めを毎日使用し、帽子や日傘での物理的な遮光も併用して紫外線対策を行ってください。対策を怠ると、色素沈着を生じるリスクが高まります。
レチノールやAHA、BHAなどのピーリング成分は肌への刺激が強いため、回復期間中は避けてください。また、アルコール系化粧品の使用やスクラブ洗顔も控えましょう。
副作用リスクと対処法
フラクショナルレーザーの代表的な副作用は、以下の通りです。
- 色素沈着
- 感染症
- 瘢痕(はんこん)形成
色素沈着は、紫外線によるダメージや炎症の長期化により発生することがあります。色素沈着が生じてしまった場合は、しばらく経過観察をすると改善することも多いです。時間が経過しても改善が乏しい場合はハイドロキノンやトレチノインという塗り薬を用いることにより改善することもあります。
感染症は稀ですが、施術部位を清潔に保つことで予防できます。治療後は手をよく洗ってから患部に触れ、汚れた手で触れないように注意してください。感染症が発生した場合は、抗生物質による治療を行います。
瘢痕(はんこん)形成とは、傷が治った後に残る傷跡が生じる症状です。この副作用は極めて稀ですが、ケロイド体質の方は生じやすい傾向にあります。かさぶたを無理に剥がすと炎症が長引き、リスクが大きくなる可能性があります。
その他の副作用として、一時的にニキビが増加する場合がありますが、これは毛一過性の反応であり、通常1~2週間で自然に改善します。
フラクショナルレーザーの料金相場
フラクショナルレーザーの料金設定には以下の要因が影響します。
- 使用機器の種類と性能
- 治療部位と照射範囲
- クリニックの立地と設備
- 医師の経験と技術力
- 付帯サービスの内容
一般的に、アブレイティブタイプは、ノンアブレイティブタイプより高額になる傾向があります。また、都心部のクリニックほど料金が高く設定される場合が多いです。
また費用対効果を考慮すると、複数回のコース設定を利用することで単価を抑えることが可能です。
料金だけでなく、使用機器の性能や医師の技術力、アフターケアの充実度なども総合的に検討することが大切です。
施術部位別の料金目安
フラクショナルレーザーは、施術部位やその他の要因によって料金が大きく異なります。
部位 | 料金目安 |
---|---|
顔全体 | 4,000円~110,000円 |
鼻 | 8,000円~50,000円 |
鼻+両頬 | 13,000円~76,000円 |
クリニックによる価格差の理由
上記より、同じ部位でも最大約25倍もの価格差が生じていることが読み取れるでしょう。その要因の一つとして、使用する機器の違いが挙げられます。最新の高性能機器を使用するクリニックは導入コストが高いため、必然的に料金も高くなりやすいです。
しかし、安価な機器を使用しているクリニックは必ずしも治療の質が低いとはいえません。近年では、安価ながらも信頼性の高い韓国製機器を導入し、コストを抑えているクリニックもあります。
また、施術の質や施術者の人数による違いも、価格差を生む要因の一つです。例えば、医師が毎回診察して個別に出力設定を行うクリニックと、一定のやり方で流れ作業的に行うクリニックでは人件費が異なります。個別対応は料金が高くなりますが、患者様の肌状態に応じた適切な治療が受けられます。
クリニックの経営方針も価格差を生みます。大手クリニックは数を多く処理することで単価を抑えたり、全国展開のメリットを活かし薬剤や機器を大量発注して材料費を削減したりできます。一方で、個人のクリニックは丁寧な診察に時間をかける分、料金が高めに設定される傾向があるのです。
まとめ
フラクショナルレーザーは、ニキビ跡や毛穴の開き、シワなどの肌トラブルに対して高い改善効果が期待できる美容医療です。専用の機器を用いたレーザーの点状照射により、従来のレーザー治療と比較してダウンタイムを抑えつつ、肌質の改善が期待できます。
とはいえ、フラクショナルレーザーのタイプによってはいくらかダウンタイムが生じることがあります。肌トラブルのリスクを極力抑えるためにも、施術前や回復期間中の肌ケアを徹底しましょう。

アステリアクリニック院長